TOP昭和歌謡曲 − あの時、あの歌


爽快倶楽部編集部


第ニ回 上を向いて歩こう(昭和36年)
作詞:永六輔 作曲:中村八大 歌:坂本九

「上を向いて歩こう
涙がこぼれないように
思い出す 春の日 一人ぽっちの夜」*

 重苦しい労働争議、安保争議などの時代を経て、前年、池田勇人内閣による所得倍増計画が発表され、戦後の貧しさから脱却する第一歩を踏み出す日本、人々の生活は貧しいながらも将来の明るさを垣間見ることができる時代が始まる。坂本九のこの歌は、こうした時代背景の中、その時代の雰囲気を体現するものとして、そして昭和三十年代初めから引きずってきたジャズブームの延長として多くの人々に受け入れられたのかもしれない。軽妙なジャズ風アレンジに乗って唄われる坂本九の歌唱

 「ウウェエウォ ムフイテ ア〜ルコホホホ」

正に歌謡曲の世界ではかって聞いたことがない独特、洋風(?)な唄い方に人々は何を聞いたのだろう。歌詞自体はあまりに単純で他愛のないものだが、

 「泣きながら 歩く一人ぼっちの夜」

聞き手は自身を「泣きながら歩く一人ぼっち」の人間として聞いていたに違いない。それは、政治運動に挫折した学生であり、集団就職で上京した若者であり、劣悪な環境で働く若き工場労働者だったかもしれない。この年、流行った歌として「銀座の恋の物語」「惜別の歌」「スーダラ節」「王将」「おひまなら来てね」「東京ドドンパ娘」を見ていると、それぞれの歌が、それぞれの階層に受け入れられて行ったように思えてならない。
 ところで、ここ数年、坂本九の歌がリバイバルカバーされて発表されている。そのどれをとっても坂本九の歌唱を越えたものがないのに気がつく。彼の歌唱には、高度成長経済の中で地方から都会になだれ込んでくる者の光と影の表現があり、それは一方でで希望であり、又一方では寂しさである。それ故に彼の明るい笑顔から歌いだされる悲しい歌が人々の心に迫るのだと思う。たとえ、いかにそれを模倣しようともできない彼の世界なのだ。

 坂本九は昭和16年川崎に生まれ、昭和33年、ダニー飯田とパラダイス・キングに加入し、翌34年、ビクターから「何もいらない俺だけど」でレコード・デビューする。テレビや映画に出演し人気を博し、その後「すてきなタイミング」や「悲しき60才」などカバー曲をヒットさせ、ソロとして「上を向いて歩こう」や「見上げてごらん夜の星を」「明日があるさ」等を発売。昭和60年8月11日、御巣鷹山日航機墜落事故のため死亡。享年43歳。あまりにも惜しい死だった。

*「上を向いて歩こう」歌詞より転載

[この年流行った歌]
北帰行(小林旭)
銀座の恋の物語(石原裕次郎・牧村旬子)
スーダラ節(植木等)
王将(村田英雄)

主な出来事 − 昭和36年(1961)
1-1 日本海側の豪雪により国鉄ダイヤが大混乱する。
1-2 喜劇俳優、古川緑波、没。享年57歳
1-3 米国、対キューバ国交断絶
1-11 東海道新幹線に羽島駅の設置が決定され政治駅であるとして批判される
2-14 人気俳優、赤木圭一郎が撮影所内でゴーカートのにハンドルを切り損ねて壁に激突、重傷を負う(21日に死亡)
2-20 米国、ケネディ大統領が就任式演説でニューフロンティア精神を強調。
3-9 福岡県、上清炭鉱で坑内火災事故により71人が死亡
3-15 日光東照宮の薬師堂(重要文化財)が焼失
4-1 第2次池田勇人内閣による所得倍増計画初年度の積極予算成立
4-8 NHKテレビ、バラエティー番組「夢であいましょう」の放送開始
4-11 イスラエルで旧ナチス、アイヒマンの裁判が始まる
4-19 ライシャワー新駐日大使着任
6-4 日本テレビの番組「シャボン玉ホリデー」の放送開始
6-14 荻野昇等は学会でイタイイタイ病のカドミウム原因説を発表
7-3 韓国で軍事クーデタにより朴正煕少将が実権を掌握
7-8 加山雄三主演映画、若大将シリーズ第1作「大学の若大将」が封切り
7-18 チャップリンが来日
8-8 仙台高裁による松川事件差し戻し審で全員無罪判決
8-13 東独、東西ベルリンの間に壁を構築
9-1 日赤が愛の献血運動を開始する
9-15 米国、核実験再開を発表、ネバダで核実験が行われる。
9-16 第2室戸台風により最大瞬間風速84.5m以上を記録
9-20 米ソ軍縮共同宣言
10-1 奥羽本線に特急「つばさ」、羽越本線に特急「白鳥」が運行開始
10-2 大鵬、柏戸が横綱昇進
10-26 文部省の中学校学力テストが全国一斉に実施
12-12 旧軍人、右翼等による池田隼人ら政府要人暗殺クーデタ計画発覚(三無事件)
12-13 ミュージカル映画「ウエスト・サイド物語」が公開


TOP昭和歌謡曲 − あの時、あの歌


  Copyright:(C) 2004 Sokai-Club.net. All Rights Reserved.