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爽快倶楽部編集部


2015.5.1
軍事同盟
現在の日本は、後世から見れば、あるいは、そう遠くない未来から眺めてみても、非常に面白い時代であるといえるかもしれない。民主党政治に対する国民の大きな失望の後に、最大限の期待をもって迎えられた自民党安倍政権が誕生した。経済政策においてアベノミクスと呼ばれる景気回復を掲げ、今度こそはと思う国民の期待を集めている間に、日本の根本を変える、新たな憲法解釈による武力行使を可能にした自衛隊海外派遣への道筋をつけようとしている。

冷静に考えてみれば、アベノミクスによる経済政策は、単純に物価を上げるというインフレ政策の下において、実質給与はむしろ低下し、また、財政規律の構築を謳いながらも国家予算は、従来の公共事業型の最大規模になっている。これは明らかな政策の失敗であるにもかかわらず、きっと今に良くなる、その言葉を信じ、これを冷静に受け止め、批判するものがいない。まるで、太平洋戦争時における政府による戦勝の発表に似ている。

現在、世界における軍事バランスが米国一強から多国覇権に変わりつつあり、その中で新興中国やロシアの軍事的脅威の台頭が目覚しくなってきているのは紛れもない事実である。イラク戦争以降、巨大な軍事支出に苦しむ米国の軍事抑止力低下にともなって、日米軍事同盟の有効性が問われ始めているが、その状況下において日本は、いかに自らの国防を維持するべきか問われていることも間違いのない事実である。

今、安倍政権は米軍の世界戦略の中で、その後方支援に積極的に参加しようとしている。それによって日米軍事同盟の維持を行おうとする。いわゆるコバンザメ防衛である。が、ここで忘れてはならないことは、米国の世界軍事戦略とは、まず第一に米国の国益があることを忘れてはならない。この他国の国益と自国の国益をいかにバランスよく守るかは、恐らくは至難の業であろう。
世界は、もはや戦後世界ではない。かっての列強による覇権争いの時代に突入しつつある。その意味では、いわゆる国と国との同盟は、明確に軍事同盟となる。

クラウゼヴィッツはいう。「戦争とは政治とは異なる手段を以って行う政治の継続である」と。戦争とは最高位の政治の一形態である。故に、その遂行には最高位の政治家並びに軍人の資質が要求される。はたして、今の政治家諸氏にそれはありや。

我々は、未来を決定するもっとも大事な時期にさしかかっている。




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