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爽快倶楽部編集部


平成18年4月1日
パソコン、インターネット、中高年
 パソコンが会社の机に乗っておよそ10年、ウィンドウズ以前のパソコンから数えればおよそ二十年近くになる。
当時から中高年の勤務者に、特に管理職にある人にはパソコンの使用は必須とされてきた。当時は戦略的情報システムという大層な名前がついていたことご記憶の方もおられると思う。大型コンピュータシステムの入力装置としてパソコンが使われ始めた頃である。そうだとすれば、少なくとも会社勤めをしていた現在七十歳までの中高年の方のほとんどがパソコンを使えねばならない。だが、実際はそうなってはいない。会社勤めとは無縁の商店主や自営の方々にとってはなおさらであろう。中高者にとっては、パソコンとは一部の物好きな人のもの、インターネットなんてとんでもないという方が多くおられる。
 
 最近、高齢者の方がパソコン教室で習っているのをよく見かける。爽快倶楽部が行っているパソコン教室にもちらほら高齢者の方がお見えになる。理由は様々である。息子や娘から古いパソコンをお下がりにもらったが使い方がわからない、息子や娘が別に所帯を持っているのでなかなか教えてもらう機会がない、たまに実家に遊びに来ても教えてもらう時間がない。同居はしているが、親子の間では教えてくれとは言いにくい。教えてもらったことはあるが、もの覚えが悪いためかいつも喧嘩になってしまう。最近デジタルカメラを購入したので自分でプリントしたい。インターネットとはどんなものか体験したい。商店の会計処理を他者に頼んでいるが自分で会計ソフトを使って行いたい。いかなる動機であれ、パソコンやインターネットに興味を持つことは大変結構なことだ。

 パソコンの使い始めは操作を覚えるのが楽しい日課となる。ワープロや表計算ソフトウエアをマスターして行くことに喜びを感じる。自分の撮った写真をプリンターの大判印刷で見ると満足感が得られる。さらに研究好きな方であれば自作パソコンに進み、周囲の人々からパソコンの先生と呼ばれるようになり、パソコンを始めた仲間からの様々な相談や質問を受け応えするようになる。また、自分でホームページを作りあるいはブログを始める。覚え方のスピードは人それぞれだが、わずかな根気さえあれば、誰でもここまでは進める。こう考えると。パソコンとは中高年者にとって一つのおもちゃ、あるいはスポーツのように見える。おもちゃ、スポーツのようにいじくり回し、体験する。出発点はなんでもいい。それによってパソコンに楽しさや親しみを持ち、自分の趣味の世界が一つ広がったことになる。

 ところで、およそ10数年前から始まったインターネットは、人類がかって経験したことがない速さでその通信網を全世界に拡大した。それによってインターネットの利用者同士が自由に情報をやりとりすることが可能となった。葉書、手紙で数日かかる情報のやりとりが瞬時にできるようになった。ホームページやブログによって誰もがインターネットを通じて自分の意見や考えを伝えることができるようになった。もちろん、そうしたホームページやブログが電波放送や新聞、雑誌のように数百万、数千万の人々に伝わるわけではないが、その情報の重要度、必然性、おもしろさによっては数十万、数百万人の人が訪れることは往々にしてある。実はこれこそがパソコンとインターネットが為せるデジタル時代の最大の成果である。かっては情報はマスメディアによってしか伝えることができなかったが、インターネットを使えば個人が不特定多数の人に情報を伝えることができる。自分が必要と思える情報をインターネットを通じて手に入れ、他者が必要と思える情報を発信する、情報の共有である。

 これから一斉にに団塊の世代の定年が始まる。定年後も働かれる方もおられると思うが、そうした人々でさへ同じ職場で働き続けるのは難しい。多くの人が職場を去った孤独を味わうことになる。すでに定年を迎えた方においても同様である。会社という集団から離れ自分の住居を中心とした地域社会の中で生活を始めた時、そこには会社の中のように見知った同僚はいない。仕事という関係を持たない他者との友人関係はおいそれと簡単に作れるものではない。だが、インターネットは地域のみならず遠く離れた全国の人々と交流することを可能にする。最初は相手の顔や形はわからない。だがメールやブログ、ホームページを通じて交流しているうちに相手の考えをある程度理解できるようになる。やがて実際に出会うこともある。インターネットは、使い方次第でこれから始まる高齢化社会にとって、ともすれば社会から隔絶されようとする高齢者のための最も有効な交流の道具となる。

 せっかく覚えたパソコンである。どうか家の中だけで終わりにしないでいただきたい。あなたのパソコンがつないでいるインターネットの先には何百万、何千万人というまだ見ぬ友が待っている。
爽快倶楽部編集長 伊藤秀雄




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