TOP昭和歌謡曲 − あの時、あの歌


爽快倶楽部編集部


第四十九回 舟歌(昭和54年) (1979年)
作詞:阿久 悠 作曲:浜 圭介 歌:八代亜紀
阿久 悠作詞の歌は以前も取り上げてきた。彼には昭和歌謡史にはなくてはならぬ歌が数多くある。今回は「舟歌」のご紹介である。彼の作詞におけるモチベーション、あるいは時代状況に沿って表された多くの評論、解説がある。これもまた、そのどれかの一つを踏襲するものの一つになるのかもしれない。が、もし、わずかでも新しい彼の一面を云い表すことができたなら幸いである。

ここに歌われた独りの男の心情、これはおそらく彼自身に違いない。作詞活動で多くの賞に輝き時代の寵児となった彼に訪れた孤独感、いかに言葉に己の思想、心情を表そうとも、歌われ表現された瞬間にまったく別のもの変化して行く。表現者本来の宿命というべき喪失感、これが彼を孤独に追いやる。ここにはその孤独が歌われているような気がする。

また、一方で書いても書いても、次から次へとくる執筆依頼がある。が、一人の人間の心に存在する言葉は無限ではない。有限の言葉の世界からいかに次の新しい表現を生む出すか、これが流行作詞家としての彼の焦燥であたにちがいない。新しい言葉、新しい表現を追い求める作業、その果てに到達した世界とは、まさにありふれた言葉によるありふれた情景の表現であった。歌詞を読むがいい。

お酒はぬるめの 燗かんがいい
肴さかなはあぶった イカでいい
女は無口な ひとがいい
灯りはぼんやり 灯ともりゃいい
しみじみ飲めば しみじみと
想い出だけが 行き過ぎる
涙がポロリと こぼれたら
歌いだすのさ 舟唄を

沖の鴎に深酒させてよ
いとしあの娘ことヨ 朝寝する .
ダンチョネ

店には飾りが ないがいい
窓から港が 見えりゃいい
はやりの歌など なくていい
時々霧笛が 鳴ればいい
ほろほろ飲めば ほろほろと
心が すすり泣いている
あの頃 あの娘こを 思ったら
歌いだすのさ 舟唄を

ぽつぽつ飲めば ぽつぽつと
未練が胸に 舞い戻る
夜ふけてさびしく なったなら
歌いだすのさ 舟唄を
ルルル・・・・・・

どこにも何も奇異をてらう言葉など存在しない。いわば歌の世界における究極のリアリズムである。私は彼のこの方法を高く評価する者の一人である。彼のこの表現は、歌そのものを視覚化し、聞くものにその情景が見えるようである。この表現を持つ者として他に荒井由美しか知らない。この視覚化効果は、その歌い出しから聞くものを情景の中に引きずり込み、まるでその歌の主人公であるかのように錯覚させる。いかなる職業のいかなる階層の男達もこの情景に引きずり込まれ、さながら港町の寂れた酒場で酒を飲む自分がそこに見えてくる。

彼の徹底したリアリズム、これは、彼の孤独と焦燥が生み出した結果である。

[この年流行った歌]
上を向いて歩こう(坂本九)
おもいで酒(小林幸子)
YOUNG MAN(西城秀樹)
サンタモニカの風(桜田淳子)
魅せられて(ジュディー・オング)
ひとり酒(ぴんから兄弟)(3月発売)
いとしのエリー(サザン・オールスターズ)
舟歌(八代亜紀)
愛の嵐(山口百恵
命燃やして
関白宣言(さだまさし)
別れても好きな人(ロス・インディオス&シルヴィア)
異邦人(久保田早紀)
大都会(クリスタルキング)
贈る言葉(海援隊)
おやじの海(村木賢吉)
主な出来事 − (昭和54年) (1979年)
1-1 大平首相、一般消費税80年導入を示唆。
1-1 米中国交成立。
1-8 米グラマン社副社長、E2C対日売り込みに岸信介、福田赳夫、松野頼三、中曽根康弘の介在を言明。
1-9 上記4人が無関係と否定。
1-13 初の共通1次学力試験が実施される。
1-25 上越新幹線大清水トンネルが開通。
1-26 大阪市住吉区の三菱銀行北畠支店に猟銃をもった男が押し入り、猟銃を乱射して警官2人、行員2人を射殺、3人に重傷を負わせ、5000万円を要求。42時間後、容疑者は警官に撃たれ死亡。
1-31 阪神の江川卓投手が小林繁投手とトレードにより巨人入団。
3-14 全国電話自動化が完了し、ダイヤル即時通話ができるようになった。
3-22 山口地裁、殉職自衛官の護国神社合祀は違憲と判断。
3-28 米国スリーマイル島で原子力発電所の放射能漏れ事故が発生。
4-19 靖国神社にA級戦犯が合祀されていると朝日新聞が報道。 
5-3 イギリスマーガレット・サッチャーがヨーロッパ初の女性首相になる。
5-8 福岡で君が代をジャズ演奏した高校教師が免職される。
5-11 無限連鎖講(ネズミ講)防止法施行。
6-12 元号法公布施行。
6-22 省エネルギー法公布。
6-23 環境庁、富士山クリーン作戦で空缶など197.4トンを回収。
6-24 米カーター大統領来日。
7- イラクでサダム・フセインが大統領兼革命評議会議長に就任。
7-11 東名日本坂トンネル事故。東名高速下り線の日本坂トンネルで6台の車が次々と追突し死者7人、負傷者3人、焼失車両173台。
7-22 国鉄、銀河鉄道999を運行。
8-31 東京上野動物園のメスのパンダ、ランラン発病し、9月4日に死亡。
9-6 熊本県阿蘇山中岳が噴火。
9-6 日本鉄道建設公団の不正経理が発覚。さらに官庁、公団、自治体のカラ出張、カラ超勤、カラ会議、ヤミ賞与、ヤミ給与、ヤミ休暇などが明らかになった。
9-21 環境庁でカラ出張が判明。他の省庁にも広がる。
10-7 第35回衆議院議員選挙で自民党が大敗し安定多数を失う。
10-14 西武警察がテレビ朝日で放送開始。
10-19 台風20号本州上陸、死者111人。
10-20 東京都、老人医療費無料化条例改正。
10-20 山口百恵が、「私の恋人は三浦友和さんです」と発表。
10-26 3年B組金八先生がTBSで放送開始。
10-28 木曾御岳山、有史以来の初噴火。
12- 日本電信電話公社が東京23区で世界初の自動車電話のサービスを開始。
12-12 国鉄宮崎実験センターで、リニアモーターカーが時速504kmの世界新記録を樹立。


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