TOP昭和歌謡曲 − あの時、あの歌


爽快倶楽部編集部


第三十五回 人生いろいろ (昭和62年) (1987年)
作詞 中山大三郎 作曲 浜口庫之助 歌:島倉千代子
世界各地で何の符号かはわからないが飛行機墜落事故が多発する。ロッキード事件で失脚した田中角栄による院政がその腹心であった竹下内閣の登場により終止符を打つ。エイズ問題が国内で深刻化する。国鉄が分割民営化されJRとなる。こうした情勢の下、先に民営化された電電公社がNTTとして初上場し空前の高値をつける。地価が高騰し、都心ではわずか数坪の土地の億単位の価格がつく。金が金を生み、日本中が金の亡者と化す。バブルの始まりである。誰もがこのバブル経済に乗り遅れまいと多額な借金をして金をころがす。今思えば、実に不思議な現象である。経済学の原理として無限の需要などあるはずがない。が、踊らねば損というばかりに多くの企業、人々がこのバブルの波に乗り黄金色の山を夢見た。その儚いバブルに踊り狂った時代、まさに昔日の夢まぼろしである。

後の小泉政治時代にもてはやされた歌がこの年に登場した。「人生いろいろ」である。


「死んでしまおうなんて 悩んだりしたわ
バラもコスモスたちも 枯れておしまいと
髪を短くしたり 強く小指をかんだり
自分ばかり責めて 泣いてすごしたわ
ねぇおかしいでしょ 若いころ
ねぇ滑稽(こっけい)でしょ 若いころ
笑いばなしに 涙がいっぱい
涙の中に 若さがいっぱい
人生いろいろ 男もいろいろ
女だっていろいろ 咲き乱れるの

恋は突然くるわ 別れもそうね
そして心を乱し 神に祈るのよ
どんな大事な恋も 軽い遊びでも
一度なくしてわかる 胸のときめきよ
いまかがやくのよ 私たち
いまとびたつのよ 私たち
笑いばなしに 希望がいっぱい
希望の中に 若さがいっぱい
人生いろいろ 男もいろいろ
女だっていろいろ 咲き乱れるの

人生いろいろ 男もいろいろ
女だっていろいろ 咲き乱れるの
人生いろいろ 男もいろいろ
女だっていろいろ 咲き乱れるの」*

時代がバブル経済によって咲き乱れるとき、島倉千代子は
「 笑いばなしに 希望がいっぱい
希望の中に 若さがいっぱい
人生いろいろ 男もいろいろ
女だっていろいろ 咲き乱れるの」*と歌う。

今をこそ、咲き乱れなければその生の証明ができぬばかりに歌はバブルに踊る人々に歌いかける。この高揚した祭りの雰囲気の中で、立ち止まり遠くから見定める者はほとんどいなかった。夢の時代であったのである。

ところで、小泉純一郎が、国会答弁でこの歌の歌詞を使ったのは単なる偶然ではない。停滞する経済、形骸化する政治の状況下にあって、さながら英雄の凱旋のように迎えられた小泉純一郎こそ、遅れて来た政治バブルの象徴と言ってよい。国民はその宴の後にいかなる時代が待ち受けているかをしらぬまま、歌舞伎役者のような小泉の一挙手一投足に酔いしれた。小泉は時代が生んだ虚像である。そしてその祭りが終わったとき、そのあまりの悲惨さに愕然とする。

バブル、この狂気の宴はわずかな時をもって終焉する。そこに訪れる虚無と荒廃。これこそ現在、我々が見る日本の姿である。歌は時代とともにあるという。この歌は、その一つの証明である。

*「人生いろいろ」歌詞より転載

[この年流行った歌]
命くれない(瀬川瑛子)
TANGO NOIR(中森明菜)
愚か者(近藤真彦)
百万本のバラ(加藤登紀子)
ABC(少年隊)

主な出来事 − (昭和62年) (1987年)
1-7 日本で最初のエイズ患者として神戸に住む女性が認定される。
2-4 政府、売上税法案等を国会に提出。
2-9 NTT株初上場、買が殺到する。10日、160万円。
2-21 日本の半導体価格をめぐって米国上院が半導体日米協定を破っているとして大統領に報復措置を要求する決議案を可決する。
3-30 安田火災海上、ロンドンの競売でゴッホの「ひまわり」を53億円で落札。
3-31 フィリピンで誘拐されていた三井物産マニラ支店長が137日目に救出された。
4-1 国土庁の87年の時価公示、東京都区部住宅地、商業地の上昇率が76%、全国平均で7.7%で過去最高となる。
4-1 国鉄が分割民営化されJR11法人と国鉄精算事業団が発足。 
4-3 荒川河川敷などでニセ1万円札約4億円発見。
4-4 ガルーダ航空機が落雷で炎上。
4-20 瀬古利彦がボストン・マラソンで優勝。
4-24 テレビ朝日「朝まで生テレビ」放送開始。
5-3 西宮市の朝日新聞阪神支局が覆面の男により散弾銃で襲撃される。
6-9 総合保養地域整備法(リゾート法)が公布。
6-13 広島の衣笠祥雄選手が2131試合連続出場の世界新記録樹立する。
6-26 フィリピン航空機が山間に墜落。
7-4 自民党竹下派、「経世会」結成。
7-4 NHK衛星放送が24時間放送を開始。
7-11 地球の人口が50億人を超える。
7-23 東京電力で約800万キロワットの送電が停止。 東京都を中心に計280万世帯で停電。
7-29 東京高裁、ロッキード事件丸紅ルート控訴審で田中角栄元首相に懲役4年の判決。
8-16 ノースウェスト機が墜落。
8-30 タイ航空機が海上に墜落。
9-22 昭和天皇が腸通過障害のため宮内庁病院で手術。
10-4 TBS「関口宏のサンデーモーニング」放送開始。
10-12 米国MITの利根川教授、ノーベル医学生理学賞受賞決定。
10-19 ニューヨーク株式市場で史上最大の株価大暴落。下降率22.6%、1929年の大恐慌を上回った。
10-20 東証一部で下降率14.9%を記録。
10-28 1ドル137円55銭の新高値となる。
11-6 竹下内閣発足。
11-8 岡本綾子が全米女子プロゴルフ初の外国人賞金女王となる。
11-9 後楽園球場、50年の歴史に幕を下ろす。
11-24 日本のエイズ感染者が1000人に迫る。
11-28 南ア航空のジャンボ機が墜落。
12-19 石原慎太郎が「小網代港の魚網はヨットの邪魔だから運輸大臣任期中に取り除かせる」と発言。
12-31 1ドル121円台となる。


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