TOP昭和歌謡曲 − あの時、あの歌


爽快倶楽部編集部


第三十三回 夜空 (昭和48年) (1973年)
作詞山口洋子 作曲:平尾昌晃 歌:五木ひろし
 昭和48年、この年の世相をひとことで言えば、買い占め騒ぎであろう。第4次中東戦争の勃発によって深刻な石油不足が懸念され、そこから様々な生活物資の不足不安に飛び火し、大阪の主婦たちのトイレットペーパー買いだめに端を発した騒ぎである。人々は先を争って様々な物資を買い集めた。店頭に積み置かれたトイレットペーパーがあっという間に売り切れた。都バス40円、牛乳32円、かけそば150円、大卒初任給6万3499円の時代の出来事である。いつの時代でも同じであろうが、庶民にとっては日々の生活がまず第一であることは変わりはない。

 巷には多くの流行歌が流れていた。この年にヒットした歌を眺めてみると、現在も記憶に残る名曲が多い。他人の関係、ジョニイへの伝言、心の旅、赤い風船、危険なふたり、草原の輝き、わたしの彼は左きき、恋する夏の日、ふるさと、てんとう虫のサンバ、わたしの青い鳥、くちなしの花、色づく街、個人授業、青い果実、神田川、心もよう、夢の中へ、白いギター、五番街のマリーへ、なみだの操、あなた、母に捧げるバラードなど、時のフォーク、アイドルブームを反映した歌が多くあったが、歌謡曲では、殿様キングスのなみだの操、そして五木ひろしの夜空があった。

 あの娘 どこにいるのやら
 星空のつづく あの町あたりか
 細い風の口笛が
 恋の傷あとにしみる
 あああ あきらめた恋だから
 なおさら 逢いたい逢いたい
 もう一度
 夜は いつもひとりぼっち  あの娘 帰っておいでと
 流れ星にのせ そっと呼んでみた
 だれも答えはしないよ
 白い花が散るばかり
 あああ とどかない夢だから
 なおさら 淋しい淋しい
 この胸よ
 夜空 遠く果てしない (*)

 ここには、激動の70年安保が終わり、人々の目が政治から生活に移り、日々の暮らしのなかの幸せを求めた姿が写し込まれている。歌われるのは男女の愛であり、人々の平凡な日常である。

 五木ひろしにはおもしろいエピソードがある。1950年代、松方弘樹と席を並べて歌を学んでいたが、五木の歌声を聞いた松方は自らの歌に自信を無くし歌手をあきらめ、1960年、東映で映画デビューしたという。五木は1964年、コロムビア全国歌謡コンクールで優勝、上原げんとにスカウトされて1965年、「松山まさる」の芸名で『新宿駅から』でデビュしたが全くヒットせず、その後「横浜たそがれ」がヒットする7年間、不遇の時代を過ごした。この間、芸名は「一条英一」、「三谷謙」と2度変わっている。この「夜空」は当時ヒットメーカーであった山口洋子、平尾昌晃によって作られ、五木ひろしが押しも押されぬ大スターとして決定づけ、アップテンポの小気味良いリズムに五木の歌のうまさが合間って他の曲とは一線を画する大ヒット曲となった。その後、五木は千曲川、細雪、長良川艶歌など多くの名曲を残している。
 歌謡曲、演歌が低迷するようになって久しいが、五木のような日本の心を歌える歌手の存在が今もあることが嬉しい。これからも、誰もが歌える、日本人の心に響く歌を歌って欲しいと思う。

(*)「夜空」歌詞より転載

[この年流行った歌]
円山・花町・母の町(三善英史)
同棲時代(大信田礼子)
狙いうち(山本リンダ)
他人の関係(金井克子)(3月発売)
ジョニイへの伝言(ペドロ&カプリシャス)
赤とんぼの唄(あのねのね)
心の旅(チューリップ)
赤い風船(浅田美代子)
危険なふたり(沢田研二)
草原の輝き(アグネスチャン)
わたしの彼は左きき(麻丘めぐみ)
恋する夏の日(天地真理)
ふるさと(五木ひろし)
てんとう虫のサンバ(チェリッシュ)
わたしの青い鳥(桜田淳子)
くちなしの花(渡哲也)
色づく街(南沙織)
個人授業(フィンガー5)
青い果実(山口百恵)
神田川(南こうせつとかぐや姫)
心もよう(井上陽水)
夢の中へ(井上陽水)
白いギター(チェリッシュ)
五番街のマリーへ(ペドロ&カプリシャス)
なみだの操(殿さまキングス)
恋のダイヤル6700(フィンガー5)
あなた(小坂明子)
母に捧げるバラード(海援隊)

主な出来事 − (昭和48年) (1973年)
1-1 老人福祉法施行、70歳以上の老人医療が無料となる。
1-11 北京に日本大使館開設。
1-27 ヴェトナム和平協定調印。
2-5 東京・渋谷駅のコインロッカーで嬰児の死体が発見される。
2-14 円、変動相場制へ移行。
2-15 円急上昇。1ドル264円となる。
3-2 国際通貨危機再燃。
3-5 美空ひばりの実弟・かとう哲也が賭博で逮捕。
3-13 動労第2波遵法闘争に遵法闘争に怒った上尾駅の乗客6000人が電車、駅舎などを破壊。
3-20 水俣病裁判で、熊本地裁が患者側の主張を全面的に認める判決。
3-21 阪神の村山実、甲子園で引退記念試合。
3-25 東京・江戸川競馬場閉幕で都営ギャンブル全廃
4-6 祝日が日曜と重なると翌月曜も休日になる振替休日となる祝日法改正案が成立。
4-14 パ・リーグが1年2シーズン制となる。
4-24 順法闘争で電車遅延、国電マヒ。首都圏39駅で乗客ら暴動、135人逮捕。
4-27 交通ゼネストで全国で2500万人の足に影響。
5-6 ハイセイコー、NHK杯に勝ち10連勝達成。
5-19 東京ゴミ戦争で江東区議会が杉並区からのゴミ搬入拒否。
5-19 社会現象ともなった少年マガジン「あしたのジョー」が完結。
5-20 山口百恵が「としごろ」でデビュー。
5-26 昭和天皇、増原防衛庁長官に「国の守りは大事なので、旧軍の悪いところは真似をせず、いいところは取り入れてしっかりやってほしい」との発言。
5-30 輪島、学生相撲出身で初めて横綱となる。
6-5 初の環境週間が始まる。
6-10 上野−万世橋−神田−銀座−新橋間が歩行者天国となる。
6-26 政府、PCBの生産を中止。
8-1 鉄道弘済会、駅売店を「キヨスク」 と改称。
8-1 日本電信電話公社が電話ファックスサービス開始。
8-3 吉永小百合(28)と岡田太郎(43)挙式。
8-8 金大中氏が韓国CIAによって東京のホテルで拉致される。
9-15 国鉄、中央線の快速電車にシルバーシートを設置。
9-20 衆議院本会議で「北方領土返還要求」を全会一致で可決。
9-21 日本と北ベトナムが国交樹立。
9-25 1971年に消失した東京・日比谷の松本楼が再開。記念に10円カレーライスをサービス。
10-4 筑波大学発足。
10-5 米空母「ミッドウェー」横須賀入港。
10-6 第4次中東戦争勃発。
10-16 OPEC湾岸六カ国、原油公示価格を70%値上げ。
10-19 閣議、石油ショック対策のため紙使用節約運動に推進を決定、トイレットペーパー買いだめ騒動が起こる。
11-14 下関−門司を結ぶ関門橋開通。
11-14 瀬戸内晴美、平泉の中尊寺で剃髪し仏門へ入る。
11-17 富士市の製紙業界が首都圏にトイレットペーパー1000万個の緊急輸送を決定。
11-20 郵政省、電力節減のため民法テレビの午前零時以降の放送自粛を要請。
11-23 ガソリンスタンド休日休業が実施される。
11-25 第2次改造田中内閣発足。
11-27 公取委、石油連盟と元売り13社を価格協定・出荷制限など独禁法違反に容疑で強制捜査。
12-2 青森県六ヶ所村村長選挙で、むつ小川原開発賛成の前村会議長当選。
12-10 三木副総理、政府特使をして中東8カ国へ出発。
12-14 愛知県の豊川信用金庫でデマから14億円を支払う取り付け騒ぎが起こる。
12-20 北海道の登別温泉の熊牧場で、燃料不足から熊55頭を射殺。
12-22 国民生活安定緊急措置法・石油需給適正化法公布。
12-30 京成上野−京成成田間にスカイライナー運行開始。


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