TOP昭和歌謡曲 − あの時、あの歌


爽快倶楽部編集部


第二十八回 喝采(昭和47年) (1972年)
作詞 吉田旺 作曲 中村泰士 歌:ちあきなおみ
 名曲、名歌唱というものがある。いかに時が過ぎようとそれらは燦然と輝き、人々の心から消え行くことはない。
ちあきなおみの「喝采」はその一つである。彼女の歌を再び聞くとき、その歌に−というよりも−その歌声に単なる回顧や感傷を越えた感動がある。
 時は昭和47年、日中国交正常化、沖縄返還など歴史の転換点にあって、連合赤軍浅間山荘事件、グアムで旧日本兵横井さん救出、千日デパート火災、北陸トンネル内列車火災事故、札幌冬季オリンピックなど衆目を集めた行事や事件、事故により騒然とする世相の中、この歌は流れた。

いつものように 幕があき
恋の歌うたう私に 届いた報せは
黒いふちどりが ありました
あれは三年前 止めるあなた駅に残し
動きはじめた汽車に ひとり飛び乗った
ひなびた町の 昼下がり
教会の前に たたずみ
喪服の わたしは
祈る言葉さえ なくしてた

つたがからまる 白い壁
細いかげ長く落として ひとりの私は
こぼす涙さえ 忘れてた
暗い待合室 話す人もない私の
耳に私の歌が 通りすぎてゆく
いつものように 幕があく
降りそそぐライトの その中
それでも わたしは
今日も恋の歌 歌ってる(*)

この歌は、同じ年に流行ったどの歌ともちがう。歌詞の内容もさることながら、ちあきなおみの独特な歌声が聞くものをこの重い小説的な世界にひきずり込む。同じ年に流行った多くの歌と比較してもその違いは歴然としている。あまりに劇的なこの歌は、彼女の歌唱によってしかその世界を開くことはない。

夫の死によって、歌唱から離れた彼女の復帰を望む声は多い。私もそれを期待する。が、一方でこの歌こそ彼女の最高の傑作であり、歌謡界に永遠に残りうる名歌唱の一つであって、同時に彼女による夫への挽歌だとすれば、これを彼女の絶唱としてもいいのではないかとも思う。

ここに−YouTube - 喝采−当時、喝采がレコード大賞を受賞したときの貴重な記録がある。彼女の歌を聞いてみるがいい。このときの嗚咽に意味はなんであったのだろうか。

(*)「喝采」歌詞より転載。

[この年流行った歌]
この広い野原いっぱい(森山良子)
結婚しようよ(吉田拓郎)
瀬戸の花嫁(小柳ルミ子
ひとりじゃないの(天地真理)
旅の宿(よしだたくろう)
どうにもとまない(山本リンダ)
学生街の喫茶店(ガロ)
せんせい(森昌子)
京都から博多まで(藤圭子
男の子女の子(郷ひろみ)
喝采(ちあきなおみ)
おまえに(フランク永井)
そして神戸(内山田洋とクール・ファイブ)
ひなげしの花(アグネス・チャン)
さそり座の女(美川憲一)

主な出来事 − (昭和47年) (1972年)
1-1 フジテレビで木枯し紋次郎の放送開始。
1-5 米国ニクソン大統領がNASAに有人スペースシャトルの研究開発を命令。
1-15 東京、高島平団地で入居開始。
1-24 グアム島のジャングルで、愛知県出身の元日本兵・横井庄一が地元の漁民に発見された。2月2日帰国。帰国の第一声は「恥ずかしながら、横井、生きながらえて帰ってきました」であった。
2-1 裾野市の東名高速で31台が衝突、2人死亡。
2-3 第11回冬季オリンピックが札幌で開催。70m級ジャンプで日本がメダルを独占。日の丸飛行隊と呼ばれた。
2-16 ネズミ講の第一相互経済研究所所長、内村健一を脱税容疑で逮捕。
2-17 連合赤軍の森恒夫と永田洋子が群馬県で逮捕。
2-19 長野県軽井沢、河合楽器浅間山荘に連合赤軍のメンバーたちが管理人を人質に立てこもる。
2-21 米国大統領ニクソン、訪中、周恩来、毛沢東と会談。
3-7 群馬県榛名山で、連合赤軍によるリンチで殺された男性の遺体発見される。13日までに12遺体。
3-15 山陽新幹線開業。
3-13 スモン調査研究協議会が「スモン病はキノホルム剤服用による」と発表。
3-15 高松塚古墳壁画発見。
3-20 宮内庁長官、天皇陵の発掘は拒否と答弁。
3-20 富士山が遭難多発、死者20人、行方不明5人。
3-21 日本海で海難事故が50件発生、死者25人、行方不明88人。
4-6 米国、限定北爆再開。
4-16 川端康成が、仕事場の神奈川県逗子マリーナ・マンションでガス自殺。
4-23 大手私鉄の労組が24時間ストを実施 。
5-6 大阪・吉野ミュージックに出演のストリッパー一条さゆりが公然猥褻の現行犯で逮捕される。
5-12 東京新宿区の新宿駅西口地下のコインロッカーで新生児の遺体が発見される。
5-13 大阪、千日前デパートで火災、118人死亡。
5-14 秋田県能代市で火災が発生、3棟が全半焼。
5-15 沖縄が日本に復帰して沖縄県が発足。
5-26 東京、練馬区の石神井南中学で光化学スモッグの被害により13人が入院。
5-28 大阪あいりん地区で求人のありかたをめぐって労働者2000人が放火・投石し暴動となる。
5-30 テルアビブの空港で日本赤軍のメンバーが自動小銃を乱射、26人が死亡、73人が重軽症。
6-1 免許取得後一年未満のドライバーに、初心者マーク「若葉マーク」の貼り付けが義務化される。
6-12 英仏共同開発の超音速旅客機コンコルド来日する。
6-14 「中絶禁止法に反対しピル解禁を要求する女性連合」(「中ピ連」)が結成。
6-14 日航機DC−8がニューデリーで墜落。
6-17 米国でウォーターゲート事件発覚。
6-22 「四畳半襖の下張」を掲載した月刊誌「面白半分」を猥褻文書販売の容疑で摘発される。
6-27 最高裁が初の日照権承認の判決。
7-5 大平・福田・田中・三木の4人で争われた自民党総裁選で、田中角栄が当選。
8-7 日本列島改造問題懇談会が首相官邸で初会合する。
8-15 森永乳業が、ひ素ミルク中毒事件の責任を認める。
8-26 ドイツ、ミュンヘンで第20回オリンピック開催。
8-31 ダイエーが売り上げで三越を抜き業界一位となる。
9-16 阪急の福本豊選手が105盗塁の世界新記録。
9-18 国鉄がリニアモーターカーの浮上走行に成功。
9-29 田中首相と周恩来中国首相、日中共同声明に調印。日本は戦争で中国に損害を与えたことを反省、中国政府は対日賠償請求権を放棄することが盛り込まれた。
10-2 国鉄にL特急登場。
10-5 国家公安委、パチンコ玉3円への値上げを了承する。
10-9 フィリピンで元日本兵が警察軍と撃ち合い、小塚が射殺され、小野田は負傷し逃走。
10-11 本田技研、CVCCエンジン搭載の試作車を発表。
10-26 北ベトナム、米国と合意した和平9項目峡提案を発表。
10-28 中国から贈られたジャイアント・パンダ2頭(カンカン、ランラン)羽田到着。
11-1 足尾銅山、翌春の閉山を決定。
11-2 北海道の石狩炭鉱でガス爆発、31人死亡。
11-5 上野動物園でパンダ公開。
11-6 大阪発青森行き急行列車「きたぐに」が、福井県の北陸トンネル内で火災を起こして立ち往生、死者30人・重軽傷719人。
11-6 日航機、静岡県浜松上空でハイジャックされた。8時間後、羽田空港で犯人が逮捕される。
11-11 荒川線だけを残し都電5系統が廃止。
11-13 ソ連に亡命していた女優の岡田嘉子が一時帰国。 
11-24 大蔵省が海外旅行の外貨持ち出し枠を撤廃。
11-25 245人の南米移住者が「ぶらじる丸」で出航する。
11-28 モスクワで日航機DC−8が、離陸直後に墜、落炎上した。62人死亡、14人が救出された。
12-16 横浜市営地下鉄第1号線が開業。
12-17 アポロ計画最後の宇宙船「アポロ17号」打上げ。
12-18 米国、北爆全面再開。
12-28 厚生省統計で、出生数1年間で205万7000人、戦後第2のベビーブームとなる。


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