TOP昭和歌謡曲 − あの時、あの歌


爽快倶楽部編集部


第十三回 黒い花びら (昭和34年)(1959)
作詞:永 六輔 作曲:中村八大 歌:水原 弘

昭和34年、60年安保改訂前年の年である。伊勢湾台風による大自然災害や炭鉱の大規模人員整理、水俣病騒動などがあったが、皇太子ご成婚、東京オリンピック開催決定、初の天覧プロ野球試合など、明るいニュースで賑わった年でもある。

テレビ放送は新たな娯楽を生み出しつつあった。、ローハイド、拳銃無宿、ガンスモーク、ペリーメイスンなどの外国ドラマを始め、国内番組はスター千一夜、少年ジェット、番頭はんと丁稚どん、クレージキャッツショー、とんま天狗、ホームラン教室、ポパイ、まびろし探偵、矢車剣之助、旗本退屈男など子供向けを含め娯楽番組が増え急速にテレビが普及し始めた。とりわけ皇太子ご成婚前にはその放送を見ようとして町の電気屋ではテレビが飛ぶように売れた。

歌謡界では現在にも歌い継がれている多くの名曲が生まれた。 南国土佐を後にして、古城、大利根無情、東京ナイトクラブ、黄色いサクランボ、僕は泣いちっち、浅草姉妹、ギターをもった渡り鳥などである。その中に、この年開始されたレコード大賞第一回受賞曲となった水原弘の「黒い花びら」がある。彼の太く低い声で歌われたこの歌はまたたく間に大ヒットをする。歌詞の意味もわからない子供達もくちずさむ。歌は、男の失恋を歌った他愛ないものであるが、内容は実に奇妙である。少なくとも私は黒色の花びらを持つ花を知らない。さらにそこで歌われる男の女々しさは、あまりにずぶとい男の声で歌われ、この対極と非現実性が歌のヒットの一因となったのかもしれない。作曲は当代一流のジャズピアニスト中村八大、メロディーは歌謡曲そのものであるが、曲調としてその後のムード歌謡を思わせるシャレ感がある。

黒い花びら 静かに散った
あの人は 帰らぬ遠い夢
俺は知ってる 恋の悲しさ 恋の苦しさ
だからだから もう恋なんか
したくない したくないのさ

黒い花びら 涙にうかべ
今は亡い あの人 ああ 初恋
俺は知ってる 恋の淋しさ 恋の切なさ
だからだから もう恋なんか
したくない  したくないのさ(*)

歌は時代を代弁する。だが、この歌からは時代の匂いがまったくしてこない。永六輔がこの歌詞に一体何を塗りこんだのか判然としないのだ。だが、一歩下がってみれば、歌の存在意味が見えてくるような気がする。時代はテレビによって新しい娯楽を生み出しつつあった。娯楽の第一義は純粋に楽しむことにある。この意味で言えば、「黒い花びら」は娯楽としての、エンターテイメントとしての最初の成功例であったといえる。経済は岩戸景気を享受し戦後の貧困が落ち着きを見せ始める、生活の余裕感が少しづつ芽生え始めた頃である。人々は純粋な娯楽を求めた。だからこそ、その娯楽の対象としてこの歌の成功があったのかもしれない。この年発売された「黄昏のビギン 」は今も多くのファンを持つ歌謡スタンダードの一つである。この曲はまた、後にちあきなおみによってリバイバルヒットしたことを覚えておられる方は多いだろう。
彼はこのヒットの後、一時不遇な時代を過ごすが、「君こそわが命」の大ヒットで再びスターダムに登る。1978年(昭和53年): 6月24日、宿泊先の北九州市内で吐血し、7月5日、同市内の病院で肝硬変(食道静脈瘤破裂とも)のため42歳の若さで他界。惜しまれた死であった。

(*)「黒い花びら」の歌詞より転載

[この年流行った歌]
夜霧に消えたチャコ(フランク永井)
南国土佐を後にして(ペギー葉山)
古城(三橋美智也)
大利根無情
キサス・キサス・キサス
忠太郎月夜(三波春夫)(9月発売)
東京ナイトクラブ(フランク永井/松尾和子)
黄色いサクランボ(スリー・キャッツ)
僕は泣いちっち(守屋浩)
浅草姉妹(こまどり姉妹)
足摺岬(春日八郎)
ギターをもった渡り鳥(小林旭)(12月発売)

主な出来事 − (昭和34年)(1959)
1-1 キューバ革命。
1-10 NHK東京教育テレビジョンが開局。
1-14 第三次南極観測隊、前年に置いいてきた樺太犬15頭のうち、タロー、ジローの生存を確認。
1-19 三井鉱山、労組に6000人整理を提示。
2-1 フジテレビ放送が本放送開始。
2-1 日本教育テレビが本放送開始。
2-10 東京、杉並区の善福寺川で、BOACのスチュワーデスが遺体で発見、ベルギー人の神父が疑われたが、6月11日突然帰国、迷宮入りとなる。後に松本清張の小説の題材ともなった。
2-17 自民党の池田勇人(後の首相)が月給2倍論を展開。
3-1 スター千一夜(フジテレビ)放送開始。
3-2 おとなの漫画(フジテレビ)放送開始。
3-7 鳩山一郎没。
3-17 週刊少年サンデー(30円)、週刊少年マガジン(40円)発刊。
3-19 昭和天皇の五女・清宮(すがのみや)貴子(20)とサラリーマンの島津久永(24)との婚約が発表。
3-31 ダライ・ラマ、インドに亡命。
4-10 皇太子明仁(現=天皇)と正田美智子さんの結婚式が行われた。ご成婚は皇居から東宮仮御所まで行われ、沿道の人出53万人。皇太子が民間人と結婚したのは初めてのこと。
4-14 首都高速道路公団法公布。
4-15 最低賃金法公布。
4-16 国民年金法公布。
5-26 国際オリンピック委員会が、1964年のオリンピック開催地を東京に決定。
6-5 メートル法完全実施、尺貫法廃止。
6-18 第2次改造岸内閣発足。
6-25 プロ野球初の天覧試合、後楽園球場、巨人対阪神戦で長嶋茂雄が村山投手からサヨナラ・ホームランを打つ。
6-30 沖縄県石川市宮森小学校に米軍ジェット機が墜落、児童12人を含む21人が死亡、100人が負傷。
7-22 熊本大学医学部、水俣病の原因は有機水銀と発表。
7-24 児島明子、アメリカのミス・ユニバースコンテストで世界1位となる。
8-1 ニュースネットワーク(JNN)発足。
8-1 日産ブルーバード発売。
8-10 最高裁、松川事件の原判決破棄、差し戻し判決。
9-10 炭鉱離職者救済の「黒い羽」募金始まる。
9-24 黒塗りのスパイ偵察ジェット機U2が神奈川県藤沢飛行場に不時着。政府は国会で「米国の気象観測機」と答えるが、翌年、ソ連に同型機が狙撃されてCIAのスパイ機と判明。
9-26 伊勢湾台風、紀伊半島に上陸。死者・行方不明者5,098人、負傷者38,921人、被害家屋83万3965戸。
10-6 ソ連、月探査機ルナ3号が月の裏側を回って最初の月の裏側写真の撮影に成功。
10-6 政府国防会議、航空自衛隊の次期主力戦闘機をロッキードF104に決定。
10-10 ホームラン教室(NHK)放送開始。
10-26 自民党、安保改訂を党議決定。
10-27 安保条約反対の2万人のデモ隊が国会に突入。
11-2 水俣で漁民1500人、新日窒工場に乱入、警官隊と衝突。
11-5 国鉄でコンテナ貨物列車が走る。
11-11 政府、対ドル地域輸入制限180品目の自由化決定。
11-28 ローハイド(NET、現テレビ朝日)放送開始。
11-20 「緑のおばさん」登場。
12-3 東京陸運局が個人タクシー免許を173台に免許を交付。
12-1 東京都、老人医療無料化を実施。
12-6 拳銃無宿(フジテレビ)放送開始。
12-14 北朝鮮第1次帰国船が975人を乗せて新潟を出港。
12-25 ソニーがオールトランジスタ型テレビを発表。


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