TOP昭和歌謡曲 − あの時、あの歌


爽快倶楽部編集部


第十二回 恋の季節 (昭和43年)(1968)
作曲:作詞:岩谷 時子 作曲/いずみ たく 歌:ピンキーとキラーズ

明治百年、昭和元禄と言われたこの年、カラーテレビが普及し歌謡曲やグループサウンズ、フォークソングの黄金時代となった。人々はカラー映像で歌番組を楽しんだ。又、新三種の神器と呼ばれる「カー、クーラー、カラーテレビ」を買い求め豊かな生活を実感し始める。この年、実に多くの歌が巷で流行っている。グループサウンズの代表曲、君だけに愛を(ザ・タイガース)、想い出の渚(ワイルドワンズ)、フォークソングでは悲しくてやりきれない(フォーククルセダース)、歌謡曲としては三百六十五歩のマーチ(水前寺清子)、恋のしずく(伊東ゆかり)、ゆうべの秘密(小川知子)、今は幸せかい(佐川満男)、花と蝶(森進一)、ブルー・ライト・ヨコハマ(いしだあゆみ)、年上の女(森進一)、伊勢佐木町ブルース(青江三奈)、好きになった人(都はるみ) など今もカラオケで歌われる名曲揃いである。

その中でも、当時16歳の今陽子をボーカルとしてジョージ浜野、エンディ山口、ルイス高野、パンチョ加賀美の四人で結成されたピンキーとキラーズが歌った「恋の季節」が大ヒットし、子供から大人までこの曲をくちずさんだ。子供は、シルクハットとパンツスーツで歌うピンキーに夢中になり、幼稚園児でも口ずさみ、大人は「夜明けのコーヒー」と歌われる意味深な歌詞を好んで話題にした。

 忘れられないの
 あの人が好きよ
 青いシャツ着てさ
 海を見てたわ
 私ははだしで
 小さな貝の舟
 浮かべて泣いたの
 わけもないのに
 恋は私の恋は
 空を染めて燃えたよ
 死ぬまで私を
 ひとりにしないと
 あの人が云った
 恋の季節よ

 恋は私の恋は
 空を染めて燃えたよ
 夜明けのコーヒー
 ふたりで飲もうと
 あの人が云った
 恋の季節よ

 恋は私の恋は
 空を染めて燃えたよ
 夜明けのコーヒー
 ふたりで飲もうと
 あの人が云った
 恋の季節よ
 恋の季節よ恋の季節よ(*)

この歌は、当時新しい音楽として登場したグループサウンズの形態をとりながら、一方で歌謡曲という特殊な形で生まれた。健康を絵に描いたような今陽子の存在は、他のグループサウンズの歌手たちがともに長髪で、いわゆる汚らしい、だらしないという印象に比べて清潔であり、同時に若年ながらプロ歌手顔負けの歌唱力、それが全国民的支持を得た理由の一つであっただろう。

昭和43年とは、いつの時代もそうであるが、それにもまして、この曲に代表される光の部分と、一方で全国各地で起きた様々な公害事件、泥沼化したベトナム戦争、全国の大学で起きた紛争などの社会不安の影が同居した年である。とりわけ翌44年を含め、全国的に広がった学生運動は、今の時代には想像もできないほどの激しさを極めた。今や死語となったマルクス主義や共産主義というイデオロギーを背景としつつ、むしろそうした言葉で表現されたと言ったほうが正しいかもしれないが、時代が反映を極めようとする時、そのひずみとして表面化した公害問題やベトナム戦争に象徴される大国による覇権主義、官僚主導で進められる教育の保守化への漠然とした不安と反感が巨大なエネルギーとして噴きあがった。それはまた人々がより多くののモノを求め、より便利であることを求める大量消費や拝物主義への警鐘でもあったかもしれない。これからの時代は大きく変わろうとしている。この時の大きなエネルギーを感じた人々は決してそれを忘れてはならないと思う。この当時、学生だった多くの人々も今や団塊の世代と呼ばれ大量定年時代を迎える。この団塊の世代こそ、唯一の時代の安全弁かもしれないのだ。


(*)「恋の季節」より歌詞転載


ピンキーとキラーズ】
昭和46年解散。今陽子は今も歌手として第一線で歌手活動を行っている。

[この年流行った歌]
君だけに愛を(ザ・タイガース)
三百六十五歩のマーチ(水前寺清子)
想い出の渚(ワイルドワンズ)
恋のしずく(伊東ゆかり)
ゆうべの秘密(小川知子)
今は幸せかい(佐川満男)
花と蝶(森進一)
ブルー・ライト・ヨコハマ(いしだあゆみ)
年上の女(森進一)
伊勢佐木町ブルース(青江三奈)
悲しくてやりきれない(フォーククルセダース)
好きになった人(都はるみ)
愛の奇跡(ヒデとロザンナ)
小さなスナック(パープルシャドウズ)
天使の誘惑(黛ジュン)
グッド・ナイト・ベイビー(キング・トーンズ)
エメラルドの伝説(ザ・テンプターズ)
霧にむせぶ夜(黒木憲)
長い髪の少女(ゴールデンカップス)
愛の奇跡(ヒデとロザンナ)
山谷ブルース(岡林信康)

主な出来事 − (昭和43年)(1968)
1-8 アラブ石油輸出機構(OAPEC)が設立。
1-9 東京オリンピックで銅メダル獲得のマラソンの円谷幸吉が自殺した。遺書には。「父上様、母上様、幸吉はもうすっかり疲れてしまって走れません」 とあった。
1-29 米国の原子力空母エンタープライズが佐世保に入港し、寄港反対運動が起こる。
1-29 東大医学部学生自治会が登録医制度反対などで無期限ストに突入。
2-5 帝国ホテル旧館が明治村に移転を開始する。
2-6 倉石農相が記者会見で現行憲法は他力本願、軍艦や大砲が必要と発言、問題となる。
2-20 金嬉老事件。借金返済をせまった暴力団幹部ら2人をライフル銃で射殺して逃走し、寸又峡温泉の旅館に宿泊客ら13人を人質にとりダイナマイトを抱いて立てこもり「警察官をはじめとする日本人の朝鮮人差別を告発するために事件を起こした」と訴えた。
2-26 三派系学生、農民が成田空港建設反対デモを行う。
3-21 市外通話ができる青電話が登場する。
3-16 南ベトナム、ソンミ村虐殺事件。米陸軍の部隊がソンミ地区の老人や婦女子ばかりの農民160人を虐殺した。
3-27 厚生省、イタイイタイ病の原因を三井金属神岡鉱業所排出のカドミウムと発表。
3-28 東大全学闘争委員会が安田講堂を占拠する。卒業式が中止される。
3-31 米国大統領、北ベトナム爆撃中止を発表。
4-1 NHKカラー受信料を新設する。
4-4 米国、黒人運動指導者キング牧師が暗殺される。
4-26 全国の加入電話が1000万台を越える。
5-10 パリでベトナム和平会談が開始される。
5-16 十勝沖地震起こる。死者52人、負傷者330人、住宅全壊673、半壊3004、一部損壊15697、浸水529。
5-27 日大の学生、全学共闘会議を結成。
6-2 板付基地の米軍機が九州大学校内に墜落。
6-5 米国、ケネディー上院議員暗殺事件。
6-10 大気汚染防止法、騒音規正法公布。
6-15 文化庁発足
6-15 東大医学部学生が安田講堂占拠、17日、大河内学長、機動隊要請、排除。
6-26 小笠原諸島日本復帰。
7-1 郵便番号制度が実施される。
7-1 東京23区でポケットベルサービスが始まる。
8-8 札幌医大教授和田寿郎により日本初の心臓移植が行われる。患者は10月29日に死亡。
8-18 飛騨川バス転落事故。集中豪雨による土砂崩れのため観光バス2台が転落、乗客104名が死亡。
8-20 ソ連など共産五カ国軍、チェコに侵攻、全土制圧。
8-22 東北本線、盛岡〜青森間が電化される。
9-26 熊本県水俣湾周辺と新潟県阿賀野川流域の水俣病を有機水銀中毒による公害病と認定。
10-1 交通違反点数制度が実施される。
10-10 阪神の江夏豊が奪三振401個の世界記録を達成。
10-12 メキシコオリンピック開催。(〜27)
10-15 カネミ油症事件。西日本を中心にPCB が主な汚染原因となったカネミ倉庫発売の米ぬか油を食べ、吹き出物などの皮膚症状が出た約14,000人の人が届け出た食中毒事件。
10-17 川端康成がノーベル文学賞を受賞。
11-1 明治百年記念で復権令。
11-19 沖縄嘉手納基地で米軍爆撃機B52が爆発、5人が負傷し民家293戸被害。B52の撤去要求が強まる。
12-10 東京府中市で三億円事件発生。
12-24 米国アポロ8号が月の有人周回飛行に成功し初めて月面の様子をテレビ中継する。
12-29 東大全学部、東京教育大学4学部で入試中止。


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