TOP昭和歌謡曲 − あの時、あの歌


爽快倶楽部編集部


第十回 青い山脈(昭和24年)(1949)
作詞:西条八十、作曲:服部良一 歌:藤山一郎

昭和二十四年は、戦後日本にとって再出発の年、この年から、戦後の日本が始まったと言ってよい年である。下山事件、三鷹事件、松川事件など、戦後の混乱色が未だ濃厚であるものの、GHQにより重要物資の統制大幅撤廃が行われ自由市場が復活、ソ連引揚が再開され、国旗の自由使用が許可された。また、日米講和条約の検討が始まっている。混乱から安定へ、そして再生へ動き始めた年である。

藤山一郎の清々しい声によって歌われた「青い山脈」が日本中に響き渡り、人々はこの歌に勇気付けられ、明日への希望を抱いた。

  若く明るい 歌声に
  雪崩れは消える 花も咲く
  青い山脈 雪割桜
  空のはて
  今日もわれらの 夢を呼ぶ

  古い上着よ さようなら
  さみしい夢よ さようなら
  青い山脈 バラ色雲へ
  あこがれの
  旅の乙女に 鳥も啼く 

  雨に濡れてる 焼け跡の
  名も無い花も ふり仰ぐ
  青い山脈 輝く峰の
  懐かしさ
  見れば涙が また滲む

  父も夢見た 母も見た 
  旅路のはての その涯の 
  青い山脈 みどりの谷へ
  旅を行く
  若いわれらに 鐘が鳴る(*)

「古い上着」「さみしい夢」に決別し、「焼け跡の 名も無い花」が「青い山脈」を「ふり仰ぐ」、これは再生の始まった新しい日本の姿であり、「父も夢見た 母も見た 旅路のはての その涯の 青い山脈」とは戦中にはたせなかった自由と平和への道程である。重要物資統制が撤廃されたとしても、まだまだ生活物資は不足し人々の生活は貧しく苦しいものではあったが、やがて来るであろう「みどりの谷」の確信が人々の心にあった。

彼は他に「丘を越えて」「東京ラプソディー」「長崎の鐘」そして「酒は涙か溜息か」「影を慕いて」などの永遠に歌い継がれるべき名曲を残した。今も、多くの人々の心の中でに彼の歌は残り、勇気を与え続けている。

今、振り返ってみれば、戦争で何もかも失った日本にとって、焼け跡の上に終戦後わずか4年で、国のあらたたな行政機関が機能し始め、経済活動が復興して行くのは驚くべきスピードである。ここにはGHQの強力な占領統治政策があったことは否定できないが、同時に戦後初の国産機YS11の初試験飛行に代表されるような、日本国民本来のたくましさと英知があったように思う。

今、日本は戦後六十年、バブル崩壊後十数年を迎えている。国、地方自治体の債務超過は年々増加の一途をたどり、その歯止めもいっこうにない。この年公布された「行政機関職員定員法公布・大量人員整理」や「重要物資の統制大幅撤廃」に類する大幅な許認可規制の撤廃など思い切った政策が必要であろう。それこそ日本国民の英知であると思う。現在の我々に「青い山脈」を再び歌う日はくるのであろうか。

(*)「青い山脈」より歌詞転載

【藤山一郎】
本名・増永丈夫。明治四十四年、日本橋蠣殻町に生まれる。昭和四年、東京音楽学校(現東京芸術大学音楽部)に入学、在校中に藤山一郎としてコロムビアからデビューする。「丘を越えて」「酒は涙か溜息か」「影を慕いて」が大ヒットする。後にテイチク、コロムビアに移り、「東京ラプソディー」「青い山脈」「長崎の鐘」などが大ヒットする。声楽で鍛えられた豊かな声量と明確な発音による歌唱は、他の歌謡曲歌手とは一線を画す。彼の音楽は美空ひばりと並んで戦後の人々に励ましと生きる勇気・希望を与えた。歌唱だけではなく指揮、作曲においても活躍し、「ラジオ体操の歌」の作曲はよく知られる。昭和三十三年放送文化賞、昭和四十八年紫綬褒章、昭和五十七年勲三等瑞宝章、平成四年、国民栄誉賞受賞。日本の歌謡史に残した功績ははかり知れない。平成五年逝去。

[この年流行った歌]
トンコ節(久保幸江/楠木繁夫)
三味線ブギウギ(市丸)
銀座カンカン娘(高峰秀子)
薔薇を召しませ(小畑実)
夏の思い出
長崎の鐘(藤山一郎)
悲しき口笛(美空ひばり)

主な出来事 − (昭和38年)(1963)
1-1 マッカーサー元帥、国旗に自由使用許可
1-26 法隆寺の金堂炎上
2-8 公職資格訴願審査委員会再設置
3-16 第3次吉田内閣発足
3-31 東京消防庁が「119番」を設置
4-1 検定教科書使用開始
4-4 北大西洋条約(NATO)発足
4-5 岩波新書再刊
4-23 GHQ、1ドル360円の単一為替レート設定
5-23 ドイツ連邦共和国(西ドイツ)樹立
5-24 満年齢で数える法律公布
5-31 行政機関職員定員法公布・大量人員整理
6-1 新制国立大学69校開校
6-1 郵政省、電気通信省、地方自治省、総理府、国鉄、専売公社発足
6-14 映画倫理規定管理委員会(映倫)発会式
6-24 戦後初めてバナナが台湾から輸入される
6-27 ソ連引揚再開、第1船が舞鶴港入港
7-5 下山定則国鉄総裁行方不明、翌朝、轢死体で発見(下山事件)
7-15 中央線三鷹駅で無人電車暴走(三鷹事件)
8-4 GHQ、美観上の問題から東京の露店を路上から撤去するように命令
8-17 東北本線松川駅付近で列車転覆(松川事件)
8-26 シャウプ使節団、税制改革勧告案を発表
8-30 戦後初の国産旅客機YS11、試験飛行に成功
9-15 東京-大阪間特急復活
10-1 中華人民共和国成立
10-6 「きけわだつみのこえ」刊行
10-7 ドイツ民主共和国(東ドイツ)成立
11-1 米国務省、対日講和条約検討中と発表
11-3 湯川秀樹、ノ−ベル物理学賞受賞
11-26 プロ野球、2リーグとなる
11-27 新聞の夕刊復活
12-20 GHQ,重要物資の統制大幅撤廃を指令
12-25 マッカーサー元帥、日本人戦犯の減刑を発表


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