TOP昭和歌謡曲 − あの時、あの歌


爽快倶楽部編集部


第四回 世界の国からこんにちは(昭和45年)
作詞:島田陽子 作曲:中村八大 歌:三波春夫

 昭和45年を1970年と言い換えたほうが時代背景を理解しやすいかもしれない。昭和45年とは、’68年から始まった学生を中心とする70年安保反対運動が終息した年であり、高度成長経済政策によって生み出されたいざなぎ景気が終わった年である。全国的規模で巻き起こった安保反対運動は70年に入るとその象徴的存在としての東大安田講堂占拠の陥落と同時に、その国民的注目を失い一部過激派と呼ばれた赤軍派は3月31日、日航「よど号」事件を 引き起こし、それにより国民の同情的支持をも失う。
 一方、3月14日〜9月13日まで大阪で日本万国博覧会(EXPO’70)が開催され、そのテーマソングであった三波春夫による「世界の国からこんにちは」がテレビ、ラジオから毎日のように流される。この万博の入場者は6422万人(内外国人170万人)、およそ日本人の半数以上が入場したことになる。

「こんにちは こんにちは 西のくにから
こんにちは こんにちは 東のくにから
こんにちは こんにちは 世界のひとが
こんにちは こんにちは さくらの国で
1970年の こんにちは
こんにちは こんにちは 握手をしよう」*

三波春夫の歌は、それまでの安保反対運動の鬱積に光を当て、いざなぎ景気を謳歌するように余りに明るい。長く続いた戦後の影を払拭するようだ。歌は祭りであり、万博という祭の開催地を中心に踊る巨大な盆踊りの群れ作り上げてしまった。

「こんにちは こんにちは 笑顔あふれる
こんにちは こんにちは 心のそこから
こんにちは こんにちは 世界をむすぶ
こんにちは こんにちは 日本の国で
1970年の こんにちは
こんにちは こんにちは 握手をしよう
こんにちは こんにちは 握手をしよう」*

 三波春夫は美空ひばり、村田秀雄、春日八郎、三橋美智也と並んで国民的歌手として親しまれ、歌謡曲の中にドラマ性を持ち込んだ初めての人である。その歌謡は今も戦後歌謡曲史上に燦然と輝く。

 この年、流行った歌の中に現在もなお名曲として歌われる「知床旅情」がある。人々は江戸時代に起こったお伊勢参りのように大阪の万博に集まり熱狂し、一方で北の端の知床への旅情に思いを馳せる。昭和45年とは戦後の貧困から抜け出て、初めて国民的規模の生活の余裕が生まれつつあった年かもしれない。
 今年、愛知県で、日本で二回目の万国博覧会「愛・地球博」が開催される。人々はどんな思いでこの博覧会を眺めるのだろうか。

三波春夫 大正12年(1923年)7月19日、新潟県三島郡越路町に誕生。家業は印刷・書籍・文具商であった。7才、実母死す。歌の師匠は父親で、江差追分を習う。昭和11年(1936年)13才で上京。米穀商に奉公の後、製麺所に住み込みで働く。この頃より浪曲家への志望が高まった。昭和19年(1944年)20才。1月、陸軍入隊。満州へ渡る。昭和20年(1945年)22才。ソ連軍との戦闘に入る。10月、ハバロフスクの捕虜収容所での抑留生活が始まる。昭和32年(1957年)33才。6月15日、芸名を三波春夫と改め、歌謡界デビュー、その後ヒット曲多数。平成13年4月14日夭折。(三波春夫オフィシャルページより転載)

*「世界の国からこんにちは」歌詞より転載

[この年流行った歌]
ざんげの値打ちもない(北原ミレイ)
男と女のお話(日吉ミミ)
知床旅情(加藤登紀子)
笑って許して(和田アキ子)
圭子の夢は夜ひらく(藤圭子)
経験(辺見マリ)
もう恋なのか(にしきのあきら)
誰もいない海(トワ・エ・モア)
希望(岸洋子)
白い蝶のサンバ(森山加代子)
一度だけなら(野村真樹)
噂の女(内山田洋とクールファイブ)
京都慕情(渚ゆう子)

主な出来事 − (昭和45年)(1970)
1-5 公明党・創価学会による出版妨害が問題となる
2-3 核兵器拡散防止条約調印
3-3 沖縄復帰準備委員会発足
3-14 大阪市千里丘陵で日本万国博覧会開催(〜9-13)
3-18 クーデターによりカンボジア、シアヌーク元首が失脚
3-20 スモンの全国実態調査結果を厚生省が発表。患者1669人
3-31 赤軍派学生九人に日航機乗っ取られ韓国金浦空港へ着陸(よど号ハイジャック事件)
4-3 よど号乗客全員救出後、平城へ
4-5 石田機長、山村次官など3乗務員、機体とともに帰国
4-8 大阪地下鉄工事現場でガス爆発事故(死者78人、重軽傷者229人)
5-1 米国北ベトナム爆撃を再開
5-2 本州四国連絡橋公団法発布
5-3 池田創価学会会長、公明党と創価学会の分離を表明
5-20 '71年度使用の小学校社会科教科書に神話が復活
6-22 政府、日米安保条約の自動延長を声明
7-1 東京地裁、第2次家永訴訟で家永教科書の検定を憲法、教育基本法違反の判決
7-18 東京杉並で光化学スモッグが発生
8-2 東京で歩行者天国スタート
9-5 椿新潟大学教授、スモン病にキノホルムが関係あると指摘
10-8 屋良沖縄首席が中曽根防衛庁長官と会談し自衛隊沖縄配備反対を表明
10-28 日銀、公定歩合引き下げ(いざなぎ景気が終わる)
11-25 沖縄国政参加選挙
11-25 三島由紀夫が楯の会会員と東京市谷の自衛隊駐屯地でクーデターを扇動するが、失敗し割腹自殺
11-28 チッソの株主総会に水俣病の責任と問う一株株主が参加
12-9 加入電話の市内通話料値上げを承認、無制限7円から3分ごとに7円となる。


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